会社を作る(法人登記)
はじめに手順としては、以下のような感じになります。
1. 会社設立に必要な基礎情報を決める
2. 法人用実印を制作する。
3. 定款を制作する。
4. 製作した定款について公証役場で承認を受ける。
5. 資本金の払い込みを行う
6. 法人設立に必要な書類を用意して法務局で登記申請をする。
このような流れになります。
手順1 会社設立に必要な情報を決める
- 会社形態
- 商号(法人の名前)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 会社設立日
- 事業年度
- 役員や株主の構成
会社形態
会社形態は、会社の組織だったもののことを言います。会社法で株式会社、合同会社、合名会社、合資会社という4つの会社形態が定められています。
会社形態は、出資者の責任の範囲や経営スタイル、設立手続き、設立費用などがそれぞれ異なります。事業目的や規模によって適切な会社形態を選ぶことが重要になります。
それぞれの特徴をまとめましたので参考にしてみてください。
このほかにも、決算公告の義務や出資者の最低人数などのキマリもあります。
また法人の形態も、NPO法人や、社団法人などほかにもいろいろありますが、ここでは代表的なものを取り上げました。
今は資本金1円でも法人登記ができるので合資会社、合名会社を選ぶメリットはなさそうです。
商号(法人の名称)
法人の名称は基本的に好きなものを決めればいいと思いますが、以下のポイントを意識するとよいかと思います。
- 覚えやすく、わかりやすい名前にする
- ドメインが取得できる会社名にする
- 意味のある会社名にする
- 外国語での発音や意味を確認する
- 類似のサービスや会社名・商品がないか確認する
- 事業内容やサービスに関連した名前にする
- 他社と同じ会社名にする場合は十分に配慮する
また、会社名には次のような決まりがあります。
- 必ず法人格を前か後ろに入れる
- 同一住所で同一商号はNG
- 甲的秩序に反する商号はNG
- 使用できない文字がある
- 支店や支社という言葉は使わない
- 法令で禁止されている言葉は使はない
- 他社の商標は避ける
事業目的
事業目的を設定するには、法律に違反しないか、利益は得られるのか、わかりやすいかなどのポイントをおさえることが重要とされますが。
書き方等には特に制約はないので、取り組んでいる事業のほかに今後取り組むかもしれない事業等も書いておくと後々便利でしょう。
また、記載のない事業は営むことは出来ないということでもないです。
何が最も重要かという点は、取引相手や融資元から信頼を得るために必要になります。
上記表に例を挙げてみましたが、書き方はこのとおりでなくても大丈夫です。
本店所在地
定款には本店所在地を記載しなければいけません。
本店所在地には制限はありませんが、プライバシーの問題と住所から受けるブランドイメージというのも検討すると良いかもしれません。
本店所在地を決定するにおいて、最小行政区画(市町村、東京23区、政令指定都市の区)までを記載する方法と、詳細な住所を記載する方法があります。
本店移転(行政区内)を予定しているときなどは最小行政区画までの記載を選択すれば、後々変更に掛かる登録免許税3万円の節約にもなります。
また、本店は必ずしも会社の実際の事業所でなくても問題はないので、小規模で始める場合や将来移転が考えられる場合には、よほどのことがない限り動かない場所(例えば実家、自宅)などを本店所在地にするとよいと思います。
資本金
資本金は1円から会社設立が可能ですが、少なすぎる資本金は取引先や金融機関から信用を得にくいということもあります。
現金で払い込む「金銭出資」のほか、「現物出資」もあります。
現物出資は、自動車やパソコンといった動産、有価証券、不動産、さらには知的財産権などの無形固定資産なども認められています。
ただし現物出資は、検査役によって価格の正確性の調査が義務付けられており、出資財産に関する評価が必要となります。なお、現物出資が少額(500万円以下)の場合は、検査役による調査は不要です。
資本金の決め方にはいろいろな方法がありますが、運転資金の3-6か月分が目安とされています。
また、許認可が必要な業種によっては許可基準にのっとった資本金の決定が必要になることもあるでしょう。
下に代表定期なものを表にしてみました。参考にしてください。
また、会社設立時の資本金が1,000万円未満である事業者は、最大2年間の消費税の免税事業者の選択ができます。個人事業からの法人なりであっても免除の対象となり節税の面でも有利です。
資本金が多いとそのほか様々な税金・手数料等が負担増になります。代表的なものを下に書いておきます。
・定款認証手数料
・登録免許税
・法人税
・法人住民税
・法人事業税
法人登記するには、株主である発起人自身によって、資本金の払い込みが必要となります。でも、この時点では登記する法人の銀行口座を作ることは出来ないので、発起人個人の銀行口座(新しく作るほうが良いと思います)に振り込みを行いましょう。
次に、法務局に登記申請書の提出を行いますが、資本金が入金された口座明細や通帳の表紙コピーなどの払込証明書が必要です。
法人の銀行口座は、法人登記が完了した後で、開設可能となります。口座開設後に個人口座から法人口座に資金を移動させれば、会社のお金として運転資金や設備投資など、資本金を自由に使うことができます。
会社設立日
設立日となるのは登記が完了した日ではなく、法務局に会社の設立登記を申請した日になります。
そのため、法務局が休みの土日祝と年末年始(12/29~1/3)は、会社の設立日にできません。
資本金が1000万円未満の新設会社は、1期目、2期目の消費税が免除されるので、決算日と設立日をできるだけ離すことで、メリットを長く生かすことができます。
例えばですが、設立4月、決算3月であれば12か月間1期目がありますが、設立1月決算3月であると1期目が3か月しかありません。
縁起を担いで設立日を決めるというのも、よくある方法で下に縁起日を書いておきます。
天赦日 最高の吉日といわれていて、1年に数回しかない縁起日です。
一粒万倍日 一粒の籾(もみ)が万倍にも実り、立派な稲穂に育つという意味の言葉です。いかにも縁起がよさそうですね。
寅の日 虎の日は金運が向上する縁起日とされています。
大安 大いに安いという意味の「大安」は、何をするにも吉とされている、まさに縁起日ですね。
先勝 午前中までは「吉」、午後2時から6時までは「凶」になります。なんだか限定感があってありがたいですね。
仏滅 「仏も滅する大凶日」ですが、裏を返せば、「物事が滅する代わりに新しく生まれる日」という解釈もできるので、仏滅を選ぶ人もいるようです。
仏滅はさすがにちょっと、と個人的には思いますが、ものはとらえようなので、好きな日を設立日に選べば問題なしですね。
事業年度
事業年度も法律上は自由に設定できます。
事業年度が終わると「決算」を行います。事業年度分の法人税などを収めることになります。
事業年度絵お決める際の何に考慮して決めたら良いかをちょっと紹介します。
- 資金繰りのタイミングを考慮する
決算月が終わると2ケ月以内に確定申告を行い法人税を速やかに収める必要があります。
決算月は会社の資金が不足になりがちなな時とはずらしておいたほうがいいでしょう。
毎月一定の売り上げが上がる会社ではあまり気にしなくてもいいかもしれませんが、大概の会社では売り上げが多い月と少ない月とが、存在すると思います。
売り上げの少ない時期に決算となり、多額の納税をしないといけないと、資金繰りも大変になってくることが考えられるのでその時期も避けたほうがいいいでしょう。 - 業種ごとの繁忙期を避ける
ほとんどの業種で、業務が忙しくなる時期がありますが、決算月を決める場合に繁忙期を避けるという考え方もあります。
繁忙期はただでさえ、業務量が多くなりがちなのにそこに来て決算で普段やらない作業もやらなくてはいけません。なかなか時間を取ることができないようなときに、決算となるとかなりの負担になってしまいます。
業種ごとにいろいろな時期があると思いますので、忙しい時期を避けて決算月を決めるとよいかもしれませんね。 - 消費税の免税期間を考える
設立日の決め方とで重複しますが、免税期間は「2年間」ではなく「2期の間」なのでなるべく長いこと1期目を使ったほうが、メリットを長く生かせます。
下に例を表にしてみました。
役員や株主の構成
役員や株主の構成ですが、大きな会社や株式公開している会社(資本金5億円以上、等)では、取締役3名以上 監査役3名以上 等の決まりが有りますが、非公開の会社では取締役1名以上とこれだけの決まりなので、初めて法人登録するという段階ではあまり気にしなくてもいいと思いますが、様々な役員などがあるので紹介しておきます。
- 取締役
会社の業務執行に関わる意思決定を行う役員を言います。いわゆる「社長」「CEO」などです。 - 会計参与
賃借対照表や事業報告書を作成・保管し、それを株主や債権者に開示する役割を持ちます。非常に類似するものとして会計監査人がありますが、公認会計士または監査法人でなければ就任することは出来ません。 - 監査役
取締役や会計参与の職務が正しく行われているか監視をする役員です。前述した会計監査人とは相互補完の関係にあり、連携して法定監査を実施します。 - 執行役
指名委員会等設置会社で、業務執行を担う役員です。指名委員会等設置会社においては、経営の透明性を高めるために、経営と執行を分離しており、取締役は業務執行をせずに経営のみ行います。
執行役員という似た言葉の役職もありますが、役員のような業務も行うものの、法律上では、経営、重要事項の決定権の持つ役員には該当しません。
執行役員は各会社で自由に決めることができます。
手順2 法人用実印を制作する
会社設立の登記申請には、基本的に会社の代表印(会社実印)が必要です。ただし、2021年の商業登記規則改正により、会社設立時に登記所への印鑑提出は任意となりました。オンラインで登記申請をする場合は印鑑の提出は任意ですが、事業活動の中で実印を求められる場面はまだまだあります。
必要になってくる印鑑は、「会社実印」、「銀行印」、「社印(角印)」、「社判(住所等連絡先などが書いてあるゴム印)」この4種類が必要になってくると思います。
素材も木材を使用したもの、水牛の角を使用したもの金属を使用したもの、天然石を使用したもの、などなどいろいろなものがあります。
ホームセンターでも作れるし、町のはんこ屋さん、インターネットでも制作することは出来るので好きな素材、字体自分好みに作ってみてはいかがでしょうか。
手順3 定款を制作する
定款は会社の基礎となるルールとなるものですから、会社を設立した後のこともある程度見越して適切に作成しておいたほうがいいです。
手順1で決めた会社組織の情報を文章にしていくのですが、いきなり言われてもどのように作ればいいのかわからないというのが普通でしょう。公証役場のホームページでは、定款のフォーマットがダウンロードできるのでそれを参考に制作すればいいと思います。
また、インターネット上にも様々な定款を作ってくれるサービスがあるのでそれらを使ってもいいと思います。
手順4 制作した定款を公証役場で承認を受ける
株式会社の場合には公証役場で定款の承認が必要になります。
合同会社、合資会社、合名会社の場合は承認を受ける必要はありません。
必要書類
・定款 会社保管用、法務局提出用、公証役場保管用の3通が必要となります
・発起人の印鑑証明書 定款に記載された発起人の氏名住所が正しいか確認するために、発起人全員分の発行後3か月以内の印鑑登録証明書を添付します。また発起人に法人が含まれている場合には、発行後3か月以内の会社登記簿謄本と代表者の印鑑証明書の添付が必要になります
・収入印紙 4万円分の収入印紙を用意します。公証役場で承認後に定款に貼付して消印をします。
代理人が承認を受ける場合には委任状が必要となってきます。
公証役場で定款認証を依頼する前に、事前確認してもらうこともできます。認証段階で修正を行わなくても済むように、事前確認を受けておくとスムーズに手続きできます。公証役場によって事前確認の方法が異なりますので、まえもって公証役場に確認を取っておくことをお勧めします。
電子定款
2002年から書面による定款に加えて、PDFファイルで制作する電子定款も定款として認められるようになり、今はオンラインでの定款認証も可能になっています。
また電子定款では、書面による定款と異なり定款認証の際の収入印紙が不要となっています。4万円の印紙代がかからないことは大きなメリットですが、電子署名可能なソフトウェアやカードリーダー等が必要になってくるため、利用にはコストとの比較検討が必要です。またインターネット上で電子定款を作ってくれるサービスも多数あるのでそこを利用するのもいいと思います。
手順5 資本金の払い込みを行う
発起人名義の口座、通帳を用意します。発起人が複数いたら発起人の代表を決め、その人名義の口座を用意してくだい。
日本国内の銀行であればほぼすべて払い込み可能です。
すでに手順1で決めた資本金額が入っているときは、口座のうちの資本金額分を使いたくなりますが、そうではなく必ず振り込みで資本金の払い込みを行ってください。誰がいくら払い込んだかを明確に記録するためです。
次に資本金を払い込みしましたよ。という証明するために、通帳がある場合は、
・表紙
・表紙裏
・振り込み内容が記載されているページ
のコピーを取ってください。
ネットバンキング等を利用する方は、
・銀行名、支店名、預金種別、口座番号
・口座名義人の氏名
・振り子意味内容が記載されている箇所
をプリントアウトしてください。
次に払い込み証明書の製作を行います。
・払い込みのあった金額の総額
・払い込みがあった株数
・一株の払込金額
・日付
・本店所在地
・会社名(商号)
・代表取締役氏名、個人の実印でなく会社代表印を押す
手書きパソコンどちらでも構いませんので上記7項目を記載します。
文書の余白に会社代表印を捨て印として押しておくと、後で修正ができるので手間を省けます。
証明書と通帳コピーまたはプリントアウトした物をホチキスで冊子状に止めて、各ページの中央に代表者印で割印をして、資本金払い込みの手順は終わりです。
手順6 法人設立に必要な書類を用意して法務局で登記申請をする
会社設立も大詰めです。法務局に申請書をいよいよ提出します。
必要になる書類は下記に書いておきます。
・定款(謄本)
・登録免許税納付台紙
・発起人決定書(発起人議事録)
・代表取締役の就任承諾書(取締役が1名のみで、取締役が代表取締役と兼務する場合は不要)
・取締役就任承諾書(注
・監査役の就任承諾書(設置しない場合は不要)
・取締役印鑑証明書(注
・印鑑届書
・登記すべき事項を記録・保存した別紙、記録媒体
(注 1人起業(会社設立)する場合は、発起人兼取締役である自身の書類
申請する方法も窓口、郵送に加え、今ではオンラインでもできる時代になっているので、便利になりました。
ただオンラインの場合、専用のソフトをダウンロードしたり電子証明書の読み取りが必要になったりで、慣れていない人にはハードルが高いかもしれませんね。
登記は1週間から10日程度で完了します。
登記が終わったら、法人名義の銀行口座を作れますので、登記事項証明書(登記簿謄本)、法人印鑑証明書を取得して銀行に行って口座を開設もしくは、ネットバンクの口座を開設すれば、法人での事業が始められます。
実際の登記では、法人格、定款の内容によっても細かなところが変わってきますので、窓口や詳しい人にご相談ください。