タコの捌き方

タコの捌き方

はじめに

「今日の晩飯は絶対アジのタタキ…いや、尺越えのアジを泳がせに…ニヤニヤ、、、、」

週末、天気予報とにらめっこしながら、私の脳内ではすでに華麗な釣り計画が進行していた。目指すはあの青い海!あの潮風!そして、ピカピカ光る獲物たちとの熱いファイト!完璧だ。クーラーボックスも氷満タン、仕掛けもバッチリ。港に到着し、あとは夜明けを待つだけ!

…だった、ハズだった。

夜が明ける寸前、外はビュービュー、バッシャンバッシャン。車窓に叩きつける雨粒は、まるで私の高鳴る釣欲を嘲笑うかのよう。「まさか…」恐る恐るスマホの予報アプリを開くと、そこには無慈悲にも踊る「波浪警報」「強風注意報」の文字。そして、もしかしたらの思いで港で船宿のスタッフを待っているとスタッフからの非情な一言。「本日は悪天候のため出船中止となりました。」

がーーーーーん…。

車に戻りし、現実逃避。今日のためにどれだけ準備したと思ってるんだ!あの仕掛け、あのエサ、あの研ぎ澄まされた私の釣りスキル(妄想)…全てが無に帰した瞬間だった。まるでハリウッド大作映画のクライマックス直前で電源が落ちたような喪失感。今日一日どう過ごせばいいんだ…もう、ヤケ酒だ!ヤケ食いだ!いや、もう寝てやる…二度寝ならぬ十度寝くらいしてやる!と腐っていても仕方ないので、その辺を散歩してみる普段は歩かない港何気に新鮮。

ぐるりと散歩を終えて車に戻る途中の終戦予定だった船の前を通ると、そんな私の荒んだ心を察してか、船の船長さんから声をかけられた。
「残念だったねぇ。代わりにこれ、持っていきな!」と、私に手渡されたのは、ずっしりと重い、ビニール袋。中を覗くと…何やら蠢きぬるりと光る、鮮やかな赤色。そう、タコだった。

「え…た、タコ? しかもデカい…今日の獲物、?!」

「出船できななかったから、サービス!」と豪快に笑っている。サービスってレベルじゃねぇぞ船長さん!
こんな立派なタコ様を頂いてしまっていいんですか?!感動と同時に、ある重大な事実に気づいてしまった。

私、タコ、捌いたことないぞ。

パックのお刺身か、茹でダコしかお目にかかったことのない私にとって、目の前のタコは未知との遭遇。触手はうねり、吸盤は妙にリアル…。正直、ちょっと怖い。しかし、この素晴らしいタコを無駄にするわけにはいかない!せっかく船長がくれた命。ここは釣りに行けなかった無念を晴らすべく、一大決心をする時だ。

「よし…やってやるぞ。このタコ、捌いて美味しく食べてやる!」

こうして、私の(波乱の予感がする)タコ捌き奮闘記は、幕を開けたのであった…。

必要な道具

  • よく切れる包丁(鋏でも可)

手順1 タコの頭を裏返す

  • タコちゃん
  • 目とは反対側の漏斗と頭の隙間に指を入れて頭の外側と胴と繋がってる部分を切離す
  • 袋状の頭(タコの道具袋)をひっくり返すと、内臓(タコの道具)が出てくる

手順2 内臓を身から外す

  • 手や包丁などを駆使して内臓を切り離す

手順3 嘴をを取る

  • ひっくり返して、嘴の周りに指を入れて掻き出すようにすると、嘴が取れる

手順4 ヌメリを取る

  • タライにタコを入れたらもみ洗いするように、ヌメリで滑りを取る感じでモミモミする
  • 一通りモミモミしたら水で洗う

この作業を3、4回繰り返すと滑りが取れる
塩を使って滑りを取っても良いが、大量の塩で揉むと塩辛くなってしまうので、この方法をしています

手順5 足と頭を切り離す

  • 目の下あたりで足と頭を切離します
  • 頭に残った目もこの時に取り除きます
    写真ありませんが、嘴の時の要領で取り除けます

手順6 使いやすい大きさに切り分ける

  • 足の部分を今回は2本づつで切り分けました

切り分けたら、煮るなり、お刺身で食べるなり好きなように食べてください

さいごに

まな板の上で繰り広げられた、私とタコ様との血と汗と涙(ほぼ私の汗と心の涙)の激闘。
ヌメリ取りから内臓処理、足の切り分け、タコを捌くというのは、想像の斜め上を行く大仕事でした。あの吸盤の抵抗感、ヌメリの攻撃力、そして何より、捌き方を間違えたらタコ様に申し訳ないというプレッシャー!心が折れそうになった瞬間、数えきれません。

しかし!

苦労をした分だけ、後に待っているタコ料理たちは絶品です!
ぷりっぷりのタコ刺し、香ばしいタコの唐揚げ、そして出汁が染み込んだタコ飯…(脳内で豪華な食卓をイメージ)。
盛り付けはプロには到底及びませんが、この手で捌き、この手で調理したという事実が、何よりのスパイスです。

正直、今日は釣りに行けなくて、最初は本当に落ち込みました。でも、船長さんからこのタコを頂いたおかげで、こんな貴重な経験ができた。そして、自分で捌いたタコの美味しいのなんのって。これはこれで、最高の休日だったのかもしれません。

今回の経験で、私は学びました。たとえ計画が狂っても、予期せぬ出来事が、全く違う形の喜びを運んできてくれることがある、と。そして、タコを捌くのは大変だけど、その先に待っている感動は、何物にも代えがたい、と!

船長さん、本当にありがとうございました!このタコ、最高に美味しかったです!

そして、タコ様。あなたの命、決して無駄にはしませんでした。美味しく頂きました。また、いつか…(次は海の上で)会えるといいな!

悪天候で始まった一日でしたが、タコのおかげで、私の食卓は晴れやかに彩られたのでした。

完。

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